日本酒のラベルから味わいを読み解くには?購入前にチェックしたい8つのポイント

日本酒のラベルには、原料や数値など色々な情報が記載されていますね。

ラベルの情報をしっかり読み解くと、
・味わいを何となく予想できる
・飲み頃や保管方法などの重要事項がわかる

といったことが可能になります。

例えば、「フルーティーでスッキリした日本酒がほしい!」という場合、ラベルをチェックすれば近そうな味わいのものを見つけることができます。あくまで目安ではありますが、日本酒選びの際に便利です。

そこで今回は、日本酒ラベルから味わいを予想する方法や、見逃したくない重要項目などを紹介していきます。日本酒選びの際にぜひ参考にしてください。

※日本酒の味わいは、様々な要素で構成されています。日本酒の造り方、飲む際の酒器や温度、飲む人の経験値やその時の体調などなど…。ラベルで分かる情報はあくまで参考値として考えてください。

日本酒ラベルの基本 〜見て何がわかる?〜

日本酒ラベルのサンプル

日本酒のラベルから読み取れる情報として、特に大事なポイントを紹介していきます!

①「酒米」で全体的な味わいをイメージできる

五百万石100%表示

おおまかな味わいの印象を知りたければ、「酒米」にまず着目しましょう!

酒米は日本酒の味わいに大きく影響します。そのため、同じスペックで酒米だけを変えて何種類か出している蔵もあるほどです。

酒米の種類は代表的なもので「山田錦(やまだにしき)」「五百万石(ごひゃくまんごく)」「美山錦(みやまにしき)」「雄町(おまち)」がありますもしラベルに「米」とだけ書いてある場合は、その酒蔵のホームページを見れば米の種類も公開されていることがありますのでチェックしてみましょう。

その他にも県独自の酒米などがありますが、この4種類が全体の生産量の80%ほどを占めていますので、まずはこの4つを覚えておきましょう!もちろん他の酒米もおいしいですが、まずはこの4つを。

酒米の生産量グラフ

もちろん日本酒の製造方法などで味わいが変わってきますが、だいたい4つの酒米の特徴は以下のようなイメージです。

芳醇でふくよかな味わいになりやすい酒米2つ

山田錦(やまだにしき)
香り高く芳醇な味わいの日本酒となりやすい。
酒米の王様と呼ばれる代表的な酒米。粒が大きく割れにくいことから日本酒を造りやすい酒米とされている。
主な産地は兵庫県。特に優れた山田錦を造る地域を「特A地区」といい、「特A山田錦」の日本酒は最高峰。見つけたら即買いがおすすめ。

雄町(おまち)
柔らかな口当たりの日本酒ができやすい。
日本最古の酒米といわれており、江戸時代から160年以上の歴史がある。
他の酒米は複数の酒米を掛け合わせてできたもの(山田錦も雄町がルーツ)だが、雄町は唯一かけ合わせなしの原種。害虫などに弱く非常に栽培が難しいと言われているため「幻の酒米」とも呼ばれる。

岡山県で栽培された雄町を「備前雄町(びぜんおまち)」と呼び、中でも赤磐産の備前雄町は「赤磐雄町(あかいわおまち)」と呼ばれ最高品質だとされている。

すっきり淡麗な味わいになりやすい酒米2つ

五百万石(ごひゃくまんごく)
淡麗辛口な日本酒を造る酒米の代表格
主な産地は新潟県。山田錦より小粒で硬いため、磨くと割れやすい。
そのため米をあまり磨かない普通種や純米酒に特に使われる傾向がある。食中酒として好まれる日本酒に使われることが多い。

美山錦(みやまにしき)
すっきり癖のないお酒になりやすいと言われている。
主な産地は長野県で、寒い地域でもよく育つようにと何種類かの酒米を掛け合わせて誕生した比較的新しい酒米。冷やでも燗酒でも飲みやすい日本酒が多いため、定番酒として合わせやすい。

酒米

この4つの酒米を100%使っているお酒であれば、どれを選んでもほぼ間違いはない!と言えるほど安心感のある酒米たちです。

他にも「出羽燦々(でわさんさん)」や「越淡麗(こしたんれい)」など様々な酒米がありますので、ぜひ徐々に試していってください。※ご指摘いただき誤表記を修正しました。
中には酒米ではなく私たちが普段食べるササニシキのような飯米で造られた日本酒もあります。酒米よりも粒が小さいのでコントロールが難しく、技術力のある酒蔵さんしか作れません。酒米とまた違った味わいで面白いですよ。

②「精米歩合」でフルーティーさを見分ける

精米歩合の表示

「精米歩合」は、酒米をどれだけ削ったか(磨いたか)を示す割合です。
例えば「精米歩合40%」であれば、玄米の状態から40%が残るまで機械を用いて60%磨いたということ。

一般的に、米を磨けば磨くほど(精米歩合が低いほど)、雑味がなくフルーティーな日本酒が出来ると言われています。

精米歩合による日本酒の分け方

ただし、磨くほどいいというわけでもありません!
精米歩合が高い日本酒は、お米がより残っているので旨味やコクが楽しめる日本酒となります。

・「とにかく飲みやすくフルーティーなもの!」であれば純米大吟醸や大吟醸
・「フルーティーさと旨味のバランスがとれたもの!」であれば純米吟醸や吟醸
・「旨味があって料理に合わせやすいもの!」であれば純米酒や本醸造

というように、飲みたい味わいのニュアンスから選ぶと良いかと思います。

もしくは、
特別な日にプレゼントしたいなら… 最高ランクで知られる純米大吟醸がおすすめです。
米をしっかり磨く技術力がある酒蔵でないと作れないですし、手間がかかった日本酒なので比較的高級です。桐箱に入った日本酒も純米大吟醸が多いので、特別な日のプレゼントとしてぴったりです。

「原材料」にある醸造アルコールってなに?

醸造アルコールの表記

日本酒の主な原料は米・米麹・水。
これらに加えて醸造アルコール(アルコール添加)を使っている場合は、それも記載されています。

味や香りを際立たせたり酒質を安定させたりするために添加されるもので、このおかげで美味しくなっているとも言えます。多くはサトウキビを発酵させてつくられた蒸留酒ですので、気にせず飲んでOKです。

③「酵母」で香りがイメージできる

酵母サンプル画像
公益財団法人 日本醸造協会公式ページより

ラベルによっては「使用酵母」を載せているものもあります。酵母は日本酒のアルコール発酵に欠かせない要素で、主に香りや酸味などの味わいにも影響があります。

そのため、どんな酵母を使うかで、酸味が少なく華やかな味わいになるのか?リンゴなどの甘い香りか?など味わいの特徴が見えてきます

酵母はたくさん種類がありますが、代表的な4種類は以下のような特徴を持っています。
ちなみに有名な日本酒「新政No.6」は、6号酵母を使っていることが名前の由来です。

きょうかい 6号酵母
日本最古(※現在使われている市販の清酒酵母の中で)の酵母で新政酒造が発祥の酵母。「新政酵母」とも呼ばれている。
香りは穏やかで味に深みのある日本酒となりやすいと言われている。

きょうかい 7号酵母
長野県宮坂醸造が発祥の酵母で「真澄酵母」とも呼ばれる。オレンジのような柑橘系の穏やかな香り、酸味により落ち着いた印象の味わいになると言われている。

きょうかい 9号酵母
熊本県酒造研究所が発祥の酵母で「熊本酵母」「香露酵母」とも呼ばれる。かなり華やかな果実系の香りが特徴。

きょうかい 14号酵母
別名「金沢酵母」とも呼ばれリンゴやナシなどの甘い香りが特徴。優しい味わいの日本酒になりやすいと言われている。

④「しぼりたて」「おりがらみ」「ひやおろし」「生酒」の表記も味わいのヒント!

しぼりたて表記

裏ラベルや上記写真のように個別のシールで、「しぼりたて」や「ひやおろし」などと表記がある場合があります。日本酒を選ぶ際のヒントになるのでこちらも紹介します!

「しぼりたて」や「初しぼり」と書いてある場合

これはできたてフレッシュな日本酒のこです!
日本酒は基本、秋口に仕込んだものが冬の11月〜2月頃に新酒としてリリースされます。
私たちが目にする日本酒は透明が通常ですが、その前はもろみが混じった白い液体なんです。それを絞ると透明なお酒と酒粕に分けられます。これが「しぼり」という作業です。
つまり、できたての日本酒を「しぼりたて」と言い、フレッシュで爽快な味わいを楽しめます。中にはぷちぷちと微炭酸を感じられるものも多いです。

「ひやおろし」や「秋あがり」と書いてある場合

ひやおろし

これは冬にできた新酒をじっくりひと夏熟成させた日本酒のことです!
9月~11月頃にリリースされます。
しぼりたてのようなフレッシュな味わいとは反対に、まろやかな落ち着いた味わいを楽しめます。これがまた、秋刀魚の塩焼きや鍋料理など秋の味覚にとっても合う!ぜひ料理に合わせる一本として楽しみたい日本酒です。

「おりがらみ」や「うすにごり」と書いてある場合

酒粕の細かい粒子(「オリ」といいます)が残ったままで少しにごった日本酒のことです!
日本酒はしぼりの作業の後、細かいおりも取り除く濾過作業もあります。その作業をあえてせず、オリを残したままの日本酒が「おりがらみ」や「うすにごり」と呼ばれます。

おりがらみ

瓶の底に少しだけ白く沈殿しているのが見えますか?これがおりです。
なんと言ってもオリは旨味のもと!優しく瓶を傾けてオリを絡ませて飲むと、コクが増しておいしいですよ。おりを絡ませる時と、あえて混ぜない時だと全然味が変わります。一本で二度美味しい日本酒です。しゅわっと微発泡のものも多いです。

「生酒」と書いてある場合

生酒

一度も加熱処理していない生の日本酒のことです!
前述の「しぼりたて」の日本酒は、ほとんどこの生酒です。こちらもフレッシュでジューシーな味わいを楽しめます。
日本酒は「火入れ」と言われる加熱処理をするのですが、これは日本酒の菌を落ち着かせて、酒質の変化を防ぐなどの効果があります。これをしない日本酒なので、鮮度が命。しっかり冷蔵庫で保管し早めに飲み切りましょう。賞味期限に関しての詳細は、後述の “⑧「製造年月」の本当の意味は「瓶詰め日」” を見てください。

「生酒」とよく一緒に書いてあることが多いのが、「原酒」や「無濾過」です。全て合わせて「無濾過生原酒」と書いてあるものもあります。

無濾過生原酒

「原酒」…加水処理をしていない日本酒
「無濾過」…濾過していないオリが絡んだ日本酒(おりがらみ)

「無濾過生原酒」は加熱処理もしない、加水処理もしない、濾過もしないので、「できたてそのままの日本酒の最骨頂」とも言えます!とてもフレッシュで香り高く、濃厚な旨味を楽しめます。

原酒は加水処理をしていないので、アルコール度数が18%などと高めのものが多いです。(日本酒の平均アルコール度数は15%くらい)キンキンに冷やして、お好みでオンザロックなどにして飲むとライトな口当たりになりますよ!

しぼりたて・おりがらみ・ひやおろしの味わいの違い

表記それぞれの味わいは、上図のようなイメージです。
はっきり分かれているわけではなく、「無濾過生原酒・しぼりたて・おりがらみ」という複数掛け合わさったものもあります。もちろん銘柄によって味わいは異なってきますが、だいたい上図のような感覚で捉えればよいかと思います。

⑤「日本酒度」は甘口・辛口度合いを示す

日本酒度一覧表

ラベルに書いていない場合も多いですが、「日本酒度」では味わいの甘辛度が読み取れます。

マイナスの数値が高い・・・甘口(とろっと芳醇)
プラスの数値が高い・・・辛口(すっきり淡麗)

というのが目安です。

スッキリ辛口が飲みたければプラスの数値、とろっとした甘口が飲みたければマイナスの数値を選びましょう。実際のところ甘口辛口はいろんな要素が交わって感じるものですが、目安としてぜひ覚えてください。

⑥「酸度」は味の濃淡の目安

酸度一覧表

日本酒でいう「酸度」は「味の濃淡」の目安といったほうが近いです。酸っぱさではなく、味を引き締める役割です。

酸度が高い・・・旨味のある濃厚な味わい
酸度が低い・・・
サッパリ淡麗な味わい

酸度の平均は1.3~1.5といわれています。「0」より高い数値は濃厚でトロリとした味わい、「0」より低い数値になるとサッパリ淡麗な味わいになるといわれています。

⑦「アミノ酸度」はコクや旨味の度合い

多くはないですが、たまに「アミノ酸度」もラベルで見かけますね。これは日本酒のコクや旨味を引き出す要素の一つである「アミノ酸」の度合いです。

一般的にアミノ酸度が高いほどしっかり濃厚な味わいに、アミノ酸度が低いほどスッキリ淡麗な味わいになると言われています。

アミノ酸度が高い・・・しっかり濃厚な味わい
アミノ酸度が低い・・・スッキリ淡麗な味わい

だいたい平均値でいうと1.20〜1.50くらい
こちらのお酒はアミノ酸度1.0なので少しスッキリ系かな?と予測できますね。

アミノ酸度表記

ただし、厳密に言うと日本酒の旨味はいろんな要素から形成されていて、例えば酸の中でもクエン酸かリンゴ酸かといった種類でも変わってきます。アミノ酸度はあくまで味わいを予測する一つの目安となります。

⑧「製造年月」の本当の意味は「瓶詰め日」

製造年月の表記

知っておいてほしい項目として紹介します!
「製造年月」が書いてあると思いますが、厳密に言うと製造された日付ではありません。基本的に日本酒が瓶に詰められた日付を記載してあります。

例えば、2020年1月1日に製造され、蔵で熟成させ同年6月30日に瓶詰めされた日本酒であれば、製造年月:2020年6月30日と記載されます。とはいうものの、ほとんどの蔵がしっかりした保存設備を整えているので、実際の製造日からしばらく経った瓶詰め日だとしても問題ないでしょう。

ただし、製造年月はしっかり確認しましょう!

あまり良くない酒屋さんだと製造年月が故意で消されている場合もあります・・・。
私も経験ありなのですが、「この日本酒在庫あるなんてめずらしい!」と思ってよくラベルを見ずに買ったら、製造年月が消されていて実は2年前の日本酒だったということがありました(汗)
その時は特に味は悪くなっていなかったのでいいのですが。生酒など日本酒の種類によっては味が大きく変わる可能性もあるので注意です。

「賞味期限」の記載がない!?

ちなみに日本酒は賞味期限の記載はありません。ただし、製造年月をベースにした目安はあります。
以下は、大手酒造メーカー数社に確認をとった結果をまとめたものです。日本酒のタイプによって違う場合もありますが、だいたい以下を目安にすれば美味しくいただけます。

賞味期限の目安

あまりにも飲みきりの目安を過ぎてしまうと、エグみが増したり鼻をつく不快な香りがしたりします。

たまに、日本酒は寝かせて熟成させるとおいしい!という方もいらっしゃいますが、一般家庭での保管方法ではかなり厳しいかなと思います。。
特に生酒など冷蔵庫保管必須ですが、ご家庭だと冷蔵庫の開け閉めがよくあるので味わいを保つのは難しいです。ぜひ飲み切る目安を守って美味しく飲みましょう!

実際のラベルで味わいを読み取ってみよう!

日本酒裏ラベル画像1

精米歩合55%
酵母7号酵母
種類純米吟醸

精米歩合が55%と結構磨いて雑味のない味わいにしていることが分かります。酵母は7号酵母を使用しているので、酸味が少し強く吟醸酒でも香りは穏やかで落ち着いた味わいだろうか?と想像ができますね。

日本酒裏ラベル画像2

精米歩合55%
酒米雄町
日本酒度-4
酸度1.4

使われている酒米は雄町なので柔らかな広がりのある味わい、日本酒度は「-4」で酸度「1.4」なので甘味のあるトロリとした味の日本酒だと想像できます。

まとめ

日本酒のラベルから読み取れる大事なポイント、味わいの読み取り方を紹介してきました。日本酒を買う時などにぜひ参考にしてください。

味わいの要素は、造り方だったり飲む人のその時のコンディションだったり様々な要素が関係してきます。「指標では辛口なのにそう感じない…」といったことももちろんありますので、ラベルから想像する味わいは、目安として考えましょう。想像と実際の味がどれだけ違うかを楽しむのも面白いですよ!

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