「特別純米酒」は酒蔵の戦略?吟醸でもあえて特別純米と名乗るわけ

純米酒の中でも「特別純米酒」とラベルに記載されているものがあります。原材料は純米酒と全く同じなのに何が違うのか・・・

結論から言うと、「特別純米」と記載するための基本ルールはありつつも、記載するかしないかは蔵の判断に任されているところが大きいです。

例えば、スペックを見ると純米吟醸のはずなのに特別純米と記載されている日本酒があって、その裏には酒蔵の強い想いがあったり販売戦略があったり・・・
しかも「なぜ特別純米と記載しているのか」という理由はほとんど公開されていないので、未知数なんです。この推察が面白い!

そこで、今回は8本ほどの特別純米酒について、なぜ特別純米となっているのか推察していこうと思います。
特別純米酒の意味を知ると、もっと日本酒を選ぶのがおもしろくなりますよ!

1.特別純米のルールは?

特定名称一覧表

まずは基本ルールですが、「特別純米酒」と呼ばれるにはいくつかの条件があるんです。主な条件は以下になります。

・精米歩合は、基本的には60%「以下」
・特別な醸造方法で醸す
・酒造好適米を100%使用する

これらの中の条件を1つでもクリアしていれば純米酒も吟醸酒でも「特別純米酒」とすることができます。また、特別な醸造方法なのかどうかというのは、蔵の判断に任されていてその醸造法はさまざまです。

2.特別純米と表記される理由

※以下、これからご紹介する日本酒は、「特別純米」として販売されている日本酒です。
各蔵元ではハッキリとした理由は公開されていません。

ここでは、ラベルから読み込める「特別純米」として「おそらくこんな理由から特別純米と名乗っているのだろう」という個人的に予想される理由を書き込んでいます。

2-1.打ち出すコンセプトによって特別純米としているもの

乾坤一 特別純米辛口

乾坤一 特別純米辛口1

例えば宮城県にある大沼酒造が醸す「乾坤一 特別純米辛口」ですが、この日本酒は「特別純米」とつけられています。精米歩合55%と「吟醸酒」を名乗ってもおかしくない精米歩合で醸しています。が、あえて「特別純米酒」と名乗っている日本酒の1つです。

大沼酒造は、全量「小仕込み」と呼ばれる、普通の蔵なら大吟醸酒を作る時しか行なわない手間のかかる製造方法を採用しています。しかも、この「乾坤一 特別純米辛口」 に使用しているお米は、酒米ではなく飯米である「ササニシキ」を使っています。

乾坤一 特別純米辛口2

つまり酒米ではない特殊なお米で醸していること、吟醸酒なみの磨きをかけて醸していること、この2点の特徴から「特別純米酒」としているのではないかと推測します。 

酒米ではなく飯米を使用して日本酒を醸すと、少しクセのある独特の味わいの日本酒が出来上がってしまうことが多いのですが、この「乾坤一 特別純米辛口」 は吟醸酒なみに丁寧に磨き上げ、手作業で丁寧に醸すことで、もの凄く口当たりがよくサッパリとした味わいの日本酒に造り上げています。

・蔵元:(有)大沼酒造店(宮城県)紹介ページはこちら→
・製品:乾坤一 特別純米辛口 1800ml
・価格:2.750円(税込)
購入はこちら→

酔鯨 特別純米 しぼりたて 生酒

酔鯨 特別純米1

こちらの高知県の酔鯨酒造が醸す「酔鯨 特別純米 しぼりたて 生酒」も同様です。
酒米を55%の吟醸酒なみに磨き上げているので「吟醸酒」としてもおかしくないのですが、あえて「特別純米酒」と名乗っている日本酒です。

この蔵の特徴は、低温で醸す特殊な製造法でじっくりゆっくり時間をかけてお酒を造ります。
こうして造られた日本酒は、貯蔵も低温保存され、ほどよく熟成感が加わった円やかな味に仕上げます。

酔鯨 特別純米2

この「磨き」と「低温製法」の造りを採用することで「特別純米酒」としているのではないかと考えます。

なお、画像の特別純米酒は新酒が出回る時期の季節限定の「しぼりたて 生酒」という更に特別な日本酒です。通年商品では、生酒ではありませんが「酔鯨 特別純米酒」というのがあり、楽しめます。

飲むと分かりますが、この味わいで純米酒というくらい旨味がしっかりとあり、飲み応えのある日本酒に仕上がっています。

・蔵元:酔鯨酒造(株)(高知県)公式ページはこちら→
・製品:酔鯨 特別純米 1800ml
・価格:2.585円(税込)
購入はこちら→

2-2.特別な醸造方法をアピールするため特別純米としているもの

特別純米と名乗る条件として、精米歩合は、基本的には60%「以下」 という事がいわれています。

しかし、60%以下の基準をクリアしていないが「特別純米」と名乗っている日本酒もあります。その1つに広島県にある相原酒造の「雨後の月 超辛口 特別純米」です。

雨後の月 超辛口 特別純米

雨後の月 超辛口 特別純米
画像:日本酒の専門通販「さかや栗原」より

こちらの「雨後の月 超辛口 特別純米」は精米歩合は65%ですが「特別純米酒」と名乗っています。

酒造好適米である地元産の「八反錦」を100%使用していること、超辛口と記載があるように日本酒度が+14度もあり特別な味わいがあるということで「特別純米酒」としているのではないかと思います。

ザックリと甘口、辛口といわれる日本酒の日本酒度を書いてみると下記になります。

日本酒度 : -3~-5度→ 甘口
日本酒度 : ±0度   →うま口
日本酒度 : +3~+5度 → 辛口

普通、飲んで辛口だと感じる日本酒度はおおよそ+5度前後です。+10度となるとかなり辛口だと感じます。こちらの「雨後の月 超辛口 特別純米」は+14度なのでラベルどおり超辛口になります。

雨後の月といえば、軽やかな吟醸香でソフトな口当たりの日本酒が多いです。この蔵の他の日本酒で「+14度」という日本酒はなく、味わいという意味でも特別な日本酒という位置づけになります。

スッキリとした辛さの中に旨味がほどよく感じらる、爽やかな飲み口の日本酒です。

・蔵元:相原酒造(株)(広島県)公式ページはこちら→
・製品:雨後の月 超辛口 特別純米 1800ml
・価格:2.860円(税込)
購入はこちら→

貴 特別純米 雄町

また、こちらの山口県にある永山本家酒造が醸す「貴 特別純米 雄町」は、有名酒販店とのコラボレーションで造られた貴重な日本酒になります。

こちらも精米歩合65%と基準をクリアしていませんが「特別純米」と名乗っている日本酒になります。

貴 特別純米 雄町
画像:「味ノマチダヤ」公式サイトより

こちらの日本酒は、酒米雄町を65%精米で醸した後、2年間熟成させたVINTAGE酒として販売されています。精米歩合は65%ですが、特殊な製造工程ということで「特別純米酒」と名付けられているのではないでしょうか。

雄町特有の奥深い味わいに熟成の旨味がのった美酒です。

・蔵元:(株)永山本家酒造場(山口県)公式ページはこちら→
・製品:貴 特別純米 雄町 1800ml
・価格:2.860円(税込)
購入はこちら→

この様に精米歩合が60%以上のものであっても 、例えば「木槽しぼり」などの特殊な醸造法を取り入れている とか、長期熟成発酵などの特別な醸造方法などを取り入れているまた、酒造好適米を50%以上使用しているなどがあれば「特別純米酒」と呼ぶことができます。 

3.何が特別か?ラベルをチェックして推測しよう

国税庁の「清酒の製法品質表示基準」には、「特別純米酒」と名乗る場合、国が定める条件を満たしていることに加え、ラベルのどこかに「特別」である事が分かる様に表示することが定められています。

上川大雪 特別純米 彗星

ラベルに書いてある「特別」の表示1
上川大雪 特別純米 彗星 720ml 1,800円(税込み)

例えば、上記は、「上川大雪 特別純米 彗星」という日本酒です。

この日本酒は、北海道の酒造好適米「彗星」を100%使用して造られているというところが特別なので酒瓶にラベルシールが貼られています。

鶴齢 特別純米 雄町 秋あがり

ラベルに書いてある「特別」の表示2
鶴齢 特別純米 瀬戸産雄町55% 720ml 1,870円(税込み)

上の画像の日本酒は、「鶴齢 特別純米 雄町 秋あがり」という毎年秋になると販売される季節限定の日本酒です。(通年販売品は「鶴齢 特別純米瀬戸産 雄町 55% 」になります)

この日本酒の場合は、酒造適合米である「雄町」しかも高品質でお馴染みの「赤磐産雄町」と同等の「瀬戸産雄町」を100%使用して、精米歩合55%で醸している日本酒ということで「特別純米」となっていると考えられます。

鶴齢は淡麗辛口の日本酒が多いのですが、この雄町を使用した日本酒は、奥深く濃厚な味わいが魅力です。

惣誉 生酛仕込 特別純米

ラベルに書いてある「特別」の表示3
惣誉 生酛仕込 特別純米 720ml 1,634円(税込み)

上の画像の日本酒は「惣誉 生酛仕込 特別純米」という日本酒です。

こちらの日本酒の場合は酒造適合米である「山田錦」の特上米を100%使用し、しかも「生酛仕込み」という機械を使わない手作業で行なう手間のかかる醸造方法で造られた日本酒ということで「特別純米酒」となっていると考えられます。

蒼斗七星 特別純米65 木槽搾り

ラベルに書いてある「特別」の表示4

蒼斗七星 特別純米65 木槽搾り 1800ml 2,860円(税込み)

「蒼斗七星 特別純米65 木槽搾り」も65%の精米歩合ですが、木槽搾りといわれる搾り終えるのに何日もかけて静かに丁寧に搾る特殊な醸造法を取り入れていることにより「特別純米」としています。

この様に「特別純米酒」には各蔵がそのお酒の「なにが特別なのか」という理由が書かれたラベルを貼っています。

購入するときには「どのようにこだわっているのか」を確認することができるので、かならずラベルを確認することをおすすめします。

まとめ

「特別純米酒」と一口にいっても色々な「特別」があるんですね。ぜひラベルに記載されていたらなぜ特別純米なのか推測したくなります。きっとこれからの日本酒選びが数倍楽しくなるはずです!

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