優しい味わいを醸し出す酒米「雄町」の魅力とおすすめの日本酒5選

日本酒の酒米「雄町」を知っていますか?
実はこの雄町にはコアなファンが多く、雄町の日本酒を好む「オマチスト」と呼ばれる人々もいるほどです。

私も実際、雄町が好きで、例えば「今日は柔らかい感じの日本酒の気分だな」という時は、決まって雄町の日本酒を頼んでいます。岡山県生まれの雄町は、生産量としては全国4位。
実は雄町は一切掛け合わせなしの原種で日本最古と言われています。優しくて芳醇な味わいを作り出すことで有名。

酒米の生産量

銘柄別酒米の生産量

農林水産省 平成30年産酒造好適米の生産状況等

ファンを魅了してやまない酒米「雄町」の人気の秘密は一体何なのか?なぜここまで人気があるのか・・・
その魅力に迫っていきます。また、おすすめの雄町銘柄を5選紹介しますのでぜひ参考にしてください!

1.雄町は「幻の酒米」といわれているその理由

鍋島 純米大吟醸

岡山県高島村雄町での栽培が始まりといわれている「雄町」。酒米としては日本最古といわれており江戸時代安政6年に栽培以来160年以上の歴史がある酒米になります。

酒米品種群の成り立ちとその遺伝的背景より

他の酒米は複数の酒米を掛け合わせたものが多いのですが、雄町は唯一掛け合わせなしの原種になります。

背丈が160センチくらいにまで成長する品種の雄町は高く伸びるため穂先が大きく垂れてしまいます。そのため倒れやすく、害虫などにも弱いのが特徴です。

雄町の稲穂

室町酒造(株)公式HP 酒米「雄町」についてより

加えて、農薬や化学肥料などにも比較的弱いという特性があるため、非常に栽培が難しいといわれ、収穫量も他の品種ほど多くないのです。そのような理由から戦中戦後を境に栽培は減少し、手に入りづらい「幻の酒米」と呼ばれるようになりました。

大粒で日本酒を醸すのに最適な酒米であり、味わいも格別である「雄町」を絶やしてはいけないという事で岡山県赤磐市の利守酒造が中心となり酒米「雄町」を回復させていったのです。

そんな努力があり現在では、少しずつ栽培量も増加しています。今では岡山県の他広島県などでも栽培されていますが収穫量の9割以上は岡山県です。

岡山県で栽培された雄町を「備前雄町(びぜんおまち)」と呼び、中でも赤磐産の備前雄町は「赤磐雄町(あかいわおまち)」と呼ばれ最高品質だと言われています。

2.「雄町」ってこんな日本酒!

そんな貴重な酒米「雄町」の魅力はこんなところにあります。

2-1.優しくて芳醇な味わいといえば雄町!

白隠正宗 雄町特別純米

雄町で作った日本酒は優しい旨味が最大の魅力です。
私自身、「今日はあまり強めの日本酒の気分じゃないな〜。柔らかい感じがいいな〜」という時は雄町の日本酒を頼んでいます。

雄町の米質は、お酒にしたときに軟質で溶けやすいのが特徴。そのため濃醇でコクがあり優しい味わいになりやすいです。

しかし溶けやすいという事は、反面タイミングを間違えてしまうと溶けすぎてしまい、複雑で味が定まらず美味いお酒が出来ないという欠点もあります。つまり栽培も難しいが、酒造りにおいてはその酒蔵の腕前が表れてしまう酒米でもあるとm言えるのです。

さらに面白いのは各酒蔵の造り方によって「濃厚でまったりとした味わい」にも「口の中でとろける様なさらりとした味わい」にも仕上げることができ、多彩でバラエティーに富んだ味わいになる事から「蔵の個性を表現できる酒米」として全国の酒蔵から人気があります。

2-2.「雄町サミット」とは、コアなファンのために開催される年に1度の祭典

2019年雄町サミット参加日本酒

JA全農おかやま公式ページより

そんな雄町大好きオマチストのために開かれる年に1度の祭典が「雄町サミット」になります。

1部~3部までに別れており1部では、酒販店や飲食店を対象とした利き酒会、2部はその授賞式で一般の人も参加できる形式です。

2019年雄町サミット宣伝ポスター

2019年度の雄町サミットのパンフレット:JA全農おかやま公式ページより

そしてお待ちかねの3部は、参加酒蔵が醸した日本酒を思う存分飲み比べられる懇親会になっています。各蔵元も参加していますから直接日本酒に付いてお話も聞けるまたとないチャンスでもあります。

2019年雄町サミット会場内

JA全農おかやま公式ページより

全国の酒蔵が一同に集まり、雄町で醸した自慢の1本を持ち寄り開催される「雄町サミット」は、オマチスト達にとっては首を長くして待ちわびていたお祭り。

今年はどんな味わいの雄町が登場してくれるのだろう・・・と心躍らせながら開催日までを待つ日々がオマチストにとっては、小学生の頃の遠足と同じ気分。

遠足の日が楽しみでウキウキしていたあの気分を思い出します、大人になってあのウキウキ感がまた味わえるなんて最高ですよね。

2020年は世界的に大流行したコロナウィルスの影響で開催は中止となって、とても残念でした。コロナが収束しまた、私たちオマチストを楽しませてくれることを願っています。

3.人気の高いおすすめ「雄町」厳選5選

3-1.キレの良い清々しい味わいが魅力「山形正宗 吟醸 雄町」

山形正宗 吟醸 雄町

山形県天童市にある創業122年の歴史ある酒蔵「水戸部酒造」の醸す、赤磐産の雄町を55%磨き込んだ純米吟醸になります。

通常、酒蔵が使用する硬度の高い水といえば50度前後ですが、水戸部酒造が使用する天然水は硬度120とかなりの硬水になります。山形正宗のラインナップの全てがキレのあるシャープでスッキリとした味わいが持ち味です。

特にこの雄町を使用した「山形正宗 吟醸 雄町」においては、この硬水を使用することで、野性的でワイルドな味わいになる雄町を透明感のあるピュアで清々しいキレのある飲み口になります。

「確かに雄町だけど、すっきり感があるなぁ~」という印象です。雄町のラインナップの中では、軽やかでサッパリ系の1本に仕上がっています。

・蔵元:(株)水戸部酒造(山形県)公式ページはこちら→
・製品:山形正宗 吟醸 雄町 720ml
・価格:1,870円(税込)
購入はこちら→

3-2.雄町本来のボリューム感を味わいたいなら「悦 凱陣 純米 山廃 赤磐雄町」

悦 凱陣 純米 山廃 赤磐雄町

四国香川県にある丸尾本店は、金比羅宮の参道の一角に位置する小さいながらも由緒ある蔵元です。

昔ながらの製法や道具にこだわりを持ち丁寧に醸す味わいは個性的、故にその味わいに魅力を感じ丸尾本店のお酒出ないと物足りないというファンがいるほどです。

その魅力的な味わいは、水によるもので自蔵の井戸水の性質が仕込みの前半(12~1月頃)は軟水で穏やか、柔らかめの味わいのお酒に、後半(2~3月頃)は硬水に水質が変わると、どっしりと濃厚でしっかりとした味わいのお酒になるという面白い特性を生かしバラエティーに富んだ個性的な味わいの日本酒を醸す酒蔵になります。

「悦 凱陣 純米 山廃 赤磐雄町」は、雄町らしく存分に旨味が感じられ酸味や少しピリッと舌に来る辛味のような味わいも感じる事ができます。

また山廃造りならではの、お米本来のあのボリューム感のある味わいと、ほんの少しの熟成感が結構癖になり「これが良いのよ!たまらないねぇ~」とあとを引く1本です。

・蔵元:(有)丸尾本店(香川県)
・製品:悦 凱陣 純米 山廃 赤磐雄町 720ml
・価格:1,869円(税込)
購入はこちら→

3-3.とろ~んとした旨味が超感動「七田 七割五分磨き 雄町 ひやおろし」

七田 七割五分磨き 雄町 ひやおろし

岡山県産の雄町を75%の精米で醸した佐賀県の天山酒造が醸す日本酒になります。75%の精米ですが雑味は全く感じられません。

純米酒で、ひやおろしと言い「冬につくった日本酒を、ひと夏寝かせ」味わいを落ち着かせてから出荷させているのでほどよく熟成されており旨味と軽く酸も感じられ口に含めた瞬間「とろ~ん」としたまろやかさが口いっぱいに広がります。

飲んだ瞬間に「これはもう絶対、雄町でしょ!間違いない」と雄町感満載で胸いっぱいになるそんな1本です。

・蔵元:天山酒造(株)(佐賀県)公式ページはこちら→
・製品:七田 純米 七割五分磨き 雄町 ひやおろし 720ml
・価格:1,375円(税込)
購入はこちら→

3-4.フレッシュでみずみずしい味わいの雄町なら「開運 純米吟醸 無濾過生原酒」

開運 純米吟醸 無濾過生原酒

日本酒大国の静岡県にある土井酒造場が醸す「開運 雄町 純米吟醸 無濾過生原酒」になります。

赤磐雄町をふんだんに使用して精米歩合50%で造られた吟醸酒は雄町特有のワイルド感は控え目に品のある優しい口当たりに加え、たっぷりのお米感が感じられる「やっぱり濃いめ好きだわぁ~」と思わず口走ってしまいそうにな味わいが雄町好きにはたまらないのです。

毎年2月頃の冬の時期の限定酒として販売される貴重な雄町なので酒販店で見かけたら絶対「即買い」してほしい1本です。

・蔵元:(株)土井酒造場(静岡県)公式ページはこちら→
・製品:開運 純米吟醸 無濾過生原酒 1800ml
・価格:3,960円(税込)
購入はこちら→

3-5.自分へのご褒美やスペシャルな日の1本として「天狗舞 純米大吟醸 TENGUMAI」

天狗舞 純米大吟醸 TENGUMAI

1823年文政6年創業の197年の歴史を誇る老舗酒蔵 車多酒造が醸す「天狗舞 純米大吟醸 TENGUMAI」になります。

この蔵の杜氏は能登杜氏四天王(野口尚彦・三盃幸一・波瀬正吉・中 三郎)の一人、中 三郎氏です。2011年中氏は、黄綬褒章を受け手造りにこだわりを持った、山廃造りの名手です。

そんな中氏がこだわりを抜いた逸品は、赤磐産雄町を35%まで磨きをかけ、開栓と共に上がってくる何とも言えない香りでまずワンパンチ。

次に口に含んだ時のさらりとした繊細な口当たり「ワイルドじゃなく、マイルドだぁ~」の衝撃でツーパンチ。

そしてマイルドなのにしっかりとふくよかで奥深い味わいが最後に喉を通過するまで感じられノックダウンという感じでもうメロメロになってしまう、そんな1本です。

品のある味わいは、大吟醸ならではだと感じます。スペシャルな日の1本にぜひおすすめしたい雄町です。

・蔵元:(株)車多酒造(石川県)公式ページはこちら→
・製品:天狗舞 純米大吟醸 TENGUMAI 720ml
・価格:5,500円(税込)
購入はこちら→

まとめ

雄町の酒米は軟質で溶けやすくそのために、濃醇でコクのあるお酒にしやすいです。しかし反面溶けやすいことで味が崩れやすいというマイナス面もあり、酒蔵に雄町を扱える技量がないと美味しい日本酒造りが難しいものでもあります。

ぜひ雄町の日本酒を見つけたら飲んでみてください!

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