日本酒の「あらばしり」ってどんな意味なんでしょう?
簡単に言うと、あらばしりは「しぼりの工程で自然に抽出された日本酒」です。
通常はしぼるために機械を使うのですが、あらばしりは機械を使うことなく日本酒そのものの重みで自然と絞り出される日本酒。そのため香りも味わいもひと味違います。希少価値が高いので、居酒屋などで見つけたらぜひ飲んでほしい逸品です!
この記事では「あらばしり」の魅力について詳しく解説していきたいと思います。最後におすすめのあらばしり日本酒を紹介しますので、ぜひ味わってみてください。
1.搾りで最初に自然に出てくるお酒が「あらばしり」
画像:日の丸醸造(株)公式ページより「糟しぼり」
日本酒造りの最後の工程に「搾り」という作業があります。
出来たての日本酒の中には澱(おり)と呼ばれる酒粕が含まれています。この酒粕を取り除き、澄んだきれいな清酒にするための作業です。
「搾り」では、酒袋に入れた日本酒を槽(ふね)と呼ばれる器具の上において、圧を加えてプレスしていきます。すると袋の中には酒粕が袋の外には清酒が出てくるのです。
この圧を加える前、槽(ふね)に置いたときに酒袋の重みだけで自然に出てくる部分があります。この自然に出てきた日本酒を「あらばしり」と呼んでいます。
酒袋の自然の重みだけであふれ出てきたその部分は、外からの無理な圧力が加わっていないので搾りの工程で出来上がった日本酒とはひと味違う美味しさがあります。
1-1.「雫酒」と「あらばしり」はどう違う?
Makuakeプロジェクト「紀州百匠隊農業生産体験」初桜酒造(株)「袋搾り」作業
また、「あらばしり」と似ているのが「雫酒」です。「雫酒」とは「袋吊り」といわれる製法で搾られた日本酒の事を指します。
「袋吊り」は日本酒の搾り方の1つで、酒袋に詰めた日本酒の首部分を縛ってぶら下げ滴り落ちる「雫」を採取し、瓶詰めします。 そのため「雫酒」と呼ぶのです。
また、「雫酒」は「袋吊り」作業の時に日本酒を詰めるのに使用する18リットルの瓶(一斗瓶)のことを指して、斗瓶囲い(どびんかこい)と呼んだり、斗瓶取り(とびんとり)と呼んだりもします。
1-2.覚えておきたい「あらばしり」関連用語
「あらばしり」は圧(プレス)をかけない日本酒でした。日本酒は、それぞれ摘出する部分により異なる名称がありますのでご紹介しておきます。
SSI公認コミュニティ「日本酒学講師の会」監修 日本酒講座テキストより
- 「中取り(なかどり)」
「あらばしり」の次に採取する日本酒のこと。「中取り(なんかどり)」「中汲み(なかぐみ)」または、「中垂れ(なかだれ)」と呼びます。味わいは荒々しさや刺激が少なく、香味バランスが取れた安定した酒質になります。
- 「せめ」
「せめ」は搾りで取れる日本酒の最後の部分のことを指します。「せめ」で採取した日本酒はとても深みのある味わいになる反面、少しだけ他の部分で採取した日本酒よりも苦みが強く感じられるというウィークポイントがあります。
2.フレッシュさが魅力な「あらばしり」4つの特徴
2-1.香り高くパンチのある味わい
搾りを加えていないのでその日本酒本来の味わいが楽しめます。香りが高く、フレッシュで生き生きとした味わいが特徴です。またストレスが加わっていない日本酒だからこそ香気成分も損なわれる事なく残っています。
2-2.大量生産できない貴重な日本酒
画像:「手取川」取り扱い 矢島酒店 楽天市場店HPより
酒袋の重みだけで湧き出てくる日本酒ですから、当然のことながら大量には取れません。
大量生産する事が出来ない「あらばしり」はまさにスペシャルな日本酒といっても過言ではない貴重なお酒です。ぜひ居酒屋や酒屋でみかけたらゲットしてみてください。
2-3.澱(おり)が絡んだ濃厚な旨味
搾りの工程を踏んでいない「あらばしり」なのでお酒の中には澱(おり)と呼ばれる酒粕が若干含まれています。この酒粕には日本酒と同様の旨味や栄養成分が含まれています。
この酒粕が含まれていることにより「あらばしり」はより旨味が増し、普通の日本酒よりも濃厚な味わいが楽しめるのが特徴になります。
2-4.鑑評会出品酒として出している蔵元が多い
画像:「手取川」蔵元 吉田酒造 社長ブログより
出来上がった日本酒の素直なそして一番深い部分の味わいがわかるのが「あらばしり」だと言われています。
そういった意味から各蔵元は自慢の日本酒の「あらばしり」部分を鑑評会などの大会に出品酒として出している姿をよく見かけます。「あらばしり」は、鑑評会出品酒が多いということが特徴です。
3.オススメのあらばしり厳選5本
ここであらばしりの日本酒を紹介します。ぜひ試してみてください!
3-1.鍋島 純米吟醸あらばしり 生酒
雑誌「食楽」で過去2年間日本酒番付1位を獲得したことがある実力酒蔵の富久千代酒造が醸す「鍋島 純米吟醸 あらばしり」
鍋島の日本酒は特にそうなのですが、米の旨みを前面に押し出しかつ香り豊かな吟醸香が広がる味わいが魅力になります。
そんな鍋島のシリーズの中でも、ひときわダイレクトに香るワインのような日本酒がこちらのあらばしりです。口に含めた瞬間の酸がたつ感じと後からくる濃厚な旨味のバランスが絶妙です。
鍋島は、全ライン一つ一つ丁寧に手造りされる数に限りのある日本酒になります。日本酒通の間でもなかなか手に入れるのが困難な日本酒の1つ。もし、酒販店で目にする事があったのなら「出逢い」だと思いぜひ購入してみて下さい。
・蔵元:富久千代酒造(佐賀県) 公式ページはこちら→
・製品:鍋島 純米吟醸 あらばしり 1800ml
・価格:3,619円(税込)
・購入はこちら→
3-2.手取川 別誂至高 純米大吟醸 特醸あらばしり 生酒
日本三大麗峰「白山」その「白山」の源である手取川の伏流水を使用した品のある甘みとキレの良さに定評がある日本酒を造る吉田酒造店の看板酒が「手取川」になります。
全国の新酒鑑評会では連続9回もゴールドメダルを獲得した実績を持つ老舗酒蔵です。
この「手取川 別誂至高 純米大吟醸」は、ただ華やかなだけじゃなく品格を感じます。兵庫県産の最高峰の山田錦を使用して醸された別誂(べつあしらえ)の名にふさわしい貫禄の味わいになっています。
口に含むと柔らかく優しい甘み、スッと喉の奥をとおっていくキレの良さは手取川ならではの味わいです。
・蔵元:吉田酒造店(石川県) 公式ページはこちら→
・製品:手取川 別誂至高 純米大吟醸 特醸 1800ml
・価格:4,070円(税込)
・購入はこちら→
3-3.陸奥八仙 吟醸 シルバーラベル あらばしり 生
創業245年の伝統を誇る青森の老舗酒蔵になります。八戸の港町近くに位置する酒蔵は昔から湊翔の男達に愛される辛口の日本酒「陸奥男山」が有名です。
そしてもう1つのラインナップ「陸奥八仙」は息子である9代目が地元青森の原料にこだわって造り上げたもの。ソフトな口当たりのフレッシュで優しい甘みが特徴の「陸奥男山」とは全く違う味わいの日本酒です。
その陸奥八仙のラインナップのあらばしりが「陸奥八仙 吟醸 シルバーラベル あらばしり 生」になります。
「あらばしり」ならではの華やかな香りと、八仙らしい甘みと深い旨味で満足感のある飲み応えはさすがとしか言いようのない味わいです。
もし、予算が許すのであれば2本同時に購入し1本は4合瓶(720ml)に詰め替えて、しっかりと栓をして野菜室で保存、そして半年後に味わってみて下さい。
フレッシュな味わいとはまた違う少しだけ熟成された深みのある落ち着いた味わいになっていて驚くはずです。冬なら緩く燗酒にして飲んでみるのも超オススメです。
・蔵元:八戸酒造(青森県) 公式ページはこちら→
・製品:陸奥八仙 吟醸 シルバーラベル あらばしり 生 1800ml
・価格:3,520円(税込)
・購入はこちら→
3-4.菊姫 吟醸あらばしり生酒 1800ml
「菊姫」の吟醸あらばしりは、年に1度年始めの1月に限定数で発売される季節品になります。
ご紹介のこちらの商品は、通常ラインでは発売されていない特別な「あらばしり」になります。長年菊姫の蔵元とお付き合いがある酒販店の島屋さんが菊姫さんとのコラボで実現したものです。
平成24年度~27年度に醸された「あらばしり」を、島屋独自の氷温倉庫にて熟成。新酒の尖った感じが全くなく、角が取れた円みのある味わいと熟成酒でしか味わえない深い旨味がたまらない1本になります。
もし、余裕があれば酒造年度別に購入し味わいの違いを比べてみるのも面白いかも知れません。
・蔵元:菊姫合資会社(石川県) 公式ページはこちら→
・製品:菊姫 吟醸あらばしり生酒 1800ml
・価格:6,600円(税込)
・購入はこちら→
3-5.喜楽長 特別本醸造 あらばしり 29BY 720ml
1820年創業、200年の伝統を誇る滋賀県の酒蔵 喜多酒造が醸す「あらばしり」が「喜楽長 特別本醸造 あらばしり」になります。
純米酒造りの日本酒が多い中、この特別本醸造は純米酒にも劣らない味わいがありあすすめです。
山田錦を使用して米本来の旨味を生かしながら本醸造にありがちなツンとした味わいはなく、まろやかな甘みとスッと喉を通っていく心地いい日本酒です。
実は、この日本酒は平成29年度の清酒鑑評会の燗酒用清酒部門で賞を取っている日本酒です。
冷酒で飲むより断然ぬる燗で飲んでほしいです!まろやかさが倍増してコクが深くなり、冬場などに飲むと本当に心が「ほっこり」暖まり幸せな気分になります。
・蔵元:喜多酒造(滋賀県) 公式ページはこちら→
・製品:喜楽長 特別本醸造 あらばしり 29BY 720ml
・価格:1,265円(税込)
・購入はこちら→
まとめ
あらばしりとは、搾りの工程に入る時に最初に出てくる圧(プレス)を欠けていない状態の日本酒だということ。
こぼれ落ちてくる貴重な日本酒なので大量につくることは出来ず貴重な部分。また澱(おり)という酒粕と共に旨味の成分も一緒に含まれているので通常の日本酒よりも濃厚でダイナミックなにその日本酒本来の味わいが楽しめる。
貴重な日本酒「あらばしり」を酒販店で見かけたらぜひ1度トライしてみてください!
※掲載の商品の情報は2020年7月現在のものになります。ご購入の際の価格や在庫は 直接販売店にお問い合わせ下さい。
コメント