いい香りのもと「協会酵母」を知るともっと日本酒がおいしくなる

協会酵母(きょうかい酵母)って耳にしたことありますか?

日本醸造協会が頒布している酵母のことを「協会酵母」といいます。
ほとんどの酒蔵では、日本醸造協会が頒布している「協会酵母」と言われる酵母を購入し日本酒づくりをしています。

日本酒の中で大吟醸酒や吟醸酒と言われるお酒の中には、梨やリンゴや桃などの果物の香りにたとえられるとてもフルーティーないい香りがするお酒があります。
日本酒の原料である米自体に果物や花やハーブなどの香りは存在しません。

この香りの正体は酒造りの工程の中で使用する酵母によるものです。
日本酒の中でも吟醸酒(精米歩合60%以下)や大吟醸酒(精米歩合50%以下)と言われる高精白した米に麹と酵母を用いて低温でじっくりと長期発酵させたときにこのいい香りが生じます。

ここでは日本酒の香りのもとになる代表的な「協会酵母」について解説していきます。
そして酵母別に飲み比べたおすすめの日本酒もあわせてご紹介しています。

この記事を読み終えたあなたは、「酵母で選ぶ日本酒」という新しい切り口で日本酒を楽しめるはずです。

1.  協会酵母とは、日本醸造協会で頒布している酵母のことです

協会酵母とは、日本醸造協会で頒布している酵母(正式名称:きょうかい酵母)を指します。

日本酒以外では焼酎、ワイン用の酵母もあり、アンプルと呼ばれるガラス容器などに入れられ頒布されています。
日本酒は酵母によってアルコール発酵をしますが、大吟醸や吟醸酒の香りを決定づける大切な役割がございます。
種類も色々あり、どの酵母を使用するかで吟醸香の香りが変わってきます。

各酒蔵は、色々ある酵母の中から自分たちの酒造りに最適な酵母を選択して酒造りを行うのです。

協会酵母(きょうかい酵母)とは、日本酒の品質及び生産の向上と安定を図るため日本醸造協会が全国に頒布している酵母のこと。

2.  代表的な日本酒の協会酵母一覧表

 

酵母名特徴
6号酵母「新政」で知られる蔵元。秋田県の「新政酒造」で発見。発酵力が強く香りは控えめ。
7号酵母「真澄」で知られる蔵元。長野県「宮坂酒造」で発見。上品活華やかな香りで吟醸酒~普通酒まで幅広く使われている。
9号酵母「香露」で知られる蔵元。熊本県「熊本県酒造研究所」で発見。華やかな香りで、酸は控えめ。熊本9号酵母とも呼ばれる。
10号酵母「小川酵母」とも言われ低温で長時間かけて醪を生成。酸が少なく吟醸香が高い。
11号酵母醪の発酵期間が長期になってもキレが良くアミノ酸が少ない。辛口の酒向。
14号酵母「金沢酵母」程よい吟醸香。マスカットを思わすような香り、酸が低く指定名称酒に適する。
15号酵母「秋田流・花酵母AK-1」低温、長期の発行によって酸が少なく吟醸香の高い指定名称酒に適する。
№28リンゴ酸が全部の有機酸の80%を占め発酵力が強く華やかな香り。貴醸酒、長期熟成酒に適する。
№77リンゴ酸が全部の有機酸の70%前後を占めカプロン酸エチルが多く発生。貴醸酒、長期熟成酒に適する。
1601酸度が少なく、カプロン酸エチルが多く発生。純米酒や吟醸酒に適する。
1801酢酸イソアミルとカプロン酸エチルが多く生成される。酸度は少なく発酵力が高い。まろやかな香りと華やかな香りが特徴の大吟醸酒のための花形酵母だといわれている。

上記の表は、現在使用されている日本酒の酵母の一部です。
これが全てではなく、ほかにもありますが主な日本酒造りの酵母として使用されているものとして認識しておくといいでしょう。
日本酒を詳しく紹介する書籍などでも、その日本酒に使用されている酵母名を記載しているものがあります。

知っておくと「あぁ~リンゴ系の香りだ」とか「バナナやメロンのような香りだな」と試飲しないでも香りの想像や味わいの目安になると思います。
(但し、酒蔵によっては使用酵母を非公開にしているところもあります)

3.  協会酵母の他に各都道府県の酵母もある

協会酵母以外では、自治体や研究機関、各県や各地域で開発された酵母、また蔵などが独自で所有している「自家酵母」「蔵付き酵母」と呼ばれるものを使う酒蔵もあり様々です。

各都道府県の試験研究機関で開発された主な酵母。(これ以外にも酵母は、多数存在します)

県名酵母名特徴
山形県山形酵母(KA)香りが高く爽やかな酒を作り出す。バナナやメロンのような香り。
山形酵母に合う酒米(出羽燦々)を育て上げたのが出羽燦々である。
広島県広島吟醸酵母リンゴの様な香りを発するカプロン酸エチルが多く発生。
福島県福島酵母(うつくしま夢酵母)きょうかい7号酵母の異変株でF701と言われ酸が少なく香り高いカプロン酸エチルを醸す。
静岡県静岡酵母(NEW-5)フルーティーで綺麗な酒を造り出す酵母、スッキリとした吟醸酒向き。静岡が地酒の銘醸地になるのに一役買った。

現在でも蔵元の中には、「蔵付き酵母」と呼ばれる蔵元独自の酵母を使用し酒造りを行っている蔵元もあり、各都道府県が産地独自の酒造り米を開発するのと同時に、特徴ある香りや味を備えた酵母を開発し地酒を広める努力をしています。

4. 酵母別おススメ日本酒6選

日本酒を詳しく紹介する書籍などで、その日本酒に使用されている酵母名を記載しているものがあります。しかし店先で日本酒の酵母を調べるのは実はなかなか難しいです。
その理由は、ラベルに使用酵母を記載していない蔵元が多いためです。使用酵母を知りたければ信頼のおける酒販売店で専門の店員さんに聞くのが最良です。
今回は日本酒ソムリエにご協力いただき協会酵母としてよく使われており、飲みやすい日本酒をセレクトしてもらいました。
酵母に注目して日本酒を選び、飲み比べてみると、使用酵母により同じ日本酒でもこんなにも味わいが変わるのかと今までと違う新鮮な日本酒との出会いがあります。

4.1. 【6号酵母】6号酵母 発祥の蔵元が造るダイレクトな美味しさ|新政№6シリーズ

新政No6

6号酵母の代表格といえば「新政」でしょう。6号酵母の発祥蔵元として有名な新政酒造が醸す日本酒です。
6号酵母は現在日本醸造協会から頒布されている酵母で最古の酵母です。発酵力が強く淡麗な酒質に最適な酵母と言われています。

新政酒造の№6シリーズはこの6号酵母の魅力をダイレクトに表現することを目的に造られており、「№6」の名前の由来も6号酵母の「6」から来ています。
こだわりは、地元秋田県産の酒米を使用し、6号酵母を「生」で出すことにとことんこだわった味わい深いラインナップです。

タイプは3タイプ最上級モデルの「X-type」、№6といえばまずこれと酒好きなら誰もが知っている「S-type」そして定番タイプで生酛造りの特徴が一番際立つ“Regular”の3本。
3タイプともそれぞれに違った味わいがあり好みは人それぞれだが、特におすすめなのは「S-type」
リンゴやカリンの甘く華やかな香りに杏も混ざったような果実香がたまらない。

生酛造りで生酒にこだわっているため蔵内でマイナス5度以下の貯蔵管理体制をとっているので、その超低温発酵がこの果実香をもたらすのであろうと推測する。
味わいは6号酵母の柔らかく上品な甘みと生酛造りの特徴である酸味が相まって甘味と酸味のバランスが絶妙。6号酵母を飲んでみたいと思ったらまず新政№6を飲まれることをおすすめしたいです。

蔵元:新政酒造(株)(秋田県)【公式ページはこちら】
製品:新政№6シリーズ 740ml 
価格:1500円 ~(税込)非常に品薄のため定価で購入するのは難しいが下記酒店など割と店頭にて購入しやすい

4.2. 【6号酵母】穏やかな香りと軽快な味わいが特徴|房島屋 純米無濾過生原酒

同じ6号酵母使用でも新政の№6とは少し趣が違うのがこちら房島屋 純米無濾過生原酒 6号酵母です。
6号酵母のまろやかな味わいはそのままに無濾過生原酒の特徴であるフレッシュで濃厚な味わいが魅力の日本酒です。
房島屋 純米無濾過生原酒は、冷酒として飲むのもいいのですが、ぬる燗にすると酒米の五百万石本来の甘みが増し、ひと味違う飲み口となりおすすめです。
肉や魚の鍋物に「ぬる燗の房島屋 純米無濾過生原酒」を片手に1杯やるのもなかなか良いのでは・・・
無濾過生原酒なので少し癖のある食材と合わせても酒の味が負けずにバランスよく飲める1本です。

蔵元:所酒造(資)(岐阜県)
製品:房島屋 純米無濾過生原酒 6号酵母 720ml
価格:1500円 ~(税込)

4.3. 【7号酵母】発見蔵元が造る、香り華やか味わいあっさり|みやさか 純米吟醸 美山錦 生酒

長野県の老舗銘柄「真澄」を醸す蔵元、宮坂醸造より1946年に「協会7号酵母」が発見されました。長野県の中西部にある赤石山脈(南アルプス)北端の標高1,955mの入笠山の伏流水を使用した「真澄」は有名。
その蔵元が、2016年、発見70周年をきっかけに、7号酵母に特化したリニューアル商品「MIYASAKA~みやさか~」を誕生させました。
酒米も長野県産の美山錦にこだわっており、半年間の氷温熟成を経て出来上がった蔵元自信の1本です。
7号酵母の特徴である白桃そしてバナナの果実系の華やかな香りに加えて、レーズンのようなドライフルーツに 似た凝縮感のある味わいも感じられる。繊細な酸味と、生原酒ならではの甘みや味わいが特徴です。

蔵元:宮坂醸造(株)(長野県)【公式ページはこちら】
製品:みやさか 純米吟醸 美山錦 生酒 720ml
価格:1,512円(税込)

4.4. 【9号酵母】品のいい華やかな吟醸酒の定番|千峰天青(せんぽうてんせい) 生原酒

1872年創業。手造り、少量生産にこだわる。湘南唯一の蔵元「熊澤酒造」のお酒。
熊本9号酵母ならではの白桃に似た果実香とライラックの花のような上品な香りが特徴。酸味は穏やかなのでソフトな飲み口。
純米吟醸生原酒で16度とアルコール度数は高めですが、口当たり良く仕上げているので 生原酒でも重い感じがしないタイプです。
熊澤酒造は、同敷地内に「蔵元料理|天青」として飲食店経営もしている。大正時代の酒蔵を改装した落ち着きのある空間、隠れ家的なお店。
地元の食材にこだわった料理と蔵元ならではの搾りたての新酒や、秘蔵のお酒は絶品と評判の高い店だ。足を伸ばせる距離であれば1度訪ねてみると楽しい。

蔵元:熊澤酒造(株)(神奈川県)【公式ページはこちら】
製品:千峰天青(せんぽうてんせい) 熊本九号酵母 生原酒 720ml
価格:1,836円(税込)

4.5. 【1801号酵母】熟成された果実味と穏やかな味わい大吟醸酒の定番|紀土 大吟醸

1801酵母の特徴として上げられるのは現在ある協会酵母中もっとも高い芳香性です。日本酒の世界では大吟醸のための花形スター酵母的な存在。
その1801酵母を使用し、35%の精米歩合いで醸し出した大吟醸酒「紀土」。
エステル系酢酸イソアミルに代表されるバナナの香りとカプロン酸エチルに代表されるリンゴの香りの2つが相まって華やかな香り高い1本となっています。
大吟醸ならではの透明感あるみずみずしい飲み口で万人向けと言える。

蔵元:平和酒造(株)(和歌山県)【公式ページはこちら】
製品:紀土 大吟醸 720ml
価格:2,268円(税込)

4.6. 【F7-01号酵母】甘みと酸味の絶妙なバランス|寫楽 純米酒

寫楽は昭和30年創業の宮泉銘醸(福島)が造る日本酒。2014年SAKE COMPETITION純米酒部門 第1位 2015年は純米酒部門 5位入賞の日本酒好きにはおなじみのお酒。
寫楽 純米酒は、福島産にこだわり酒米に福島県が開発した酒造好敵米「夢の香」を使用し県オリジナルの酵母F7-01酵母で造られ、純米酒にありがちな口の中にまったりと残る甘みは抑えられており軽快さがあります。
冷蔵仕込みで低温発酵させた後、原酒のまま絞り、加水せず瓶詰め、2日以内に火入れ、急冷、瓶貯蔵と丁寧で細やかな酒造工程を経て出来上がった甘みと酸味のバランスが非常に良く取れた飲みやく、女性に人気の1本。

蔵元:宮泉銘醸(株)(福島県)【公式ページはこちら】
製品:寫楽 純米酒 720ml
価格:1,728円(税込)

まとめ

ここまで協会酵母とは何なのか、協会酵母のお話をしてまいりました。そして日本酒ソムリエおすすめの酵母別日本酒6選をご紹介してまいりました。

• 協会酵母(正式名:きょうかい酵母)とは、日本酒の品質及び生産の向上と安定を図るため日本醸造協会が全国に頒布している酵母。
• 協会酵母は1904年(明治37年)から新酒品評会で上位となった酒蔵の酵母を採取して分離、培養を行い、蔵元が安心して酒造りを行うことができるように歩んできた歴史がある。
• 協会酵母(きょうかい酵母)には多種類があり、現在では自治体や研究機関、各県や各地域で開発された酵母もある。

<酵母別おすすめの日本酒6選>

• 【6号酵母】6号酵母発祥の蔵元が造るダイレクトな美味しさ|新政№6シリーズ
• 【6号酵母】穏やかな香りと軽快な味わいが特徴|房島屋 純米無濾過生原酒
• 【7号酵母】発見蔵元が造る、香り華やか味わいあっさり|みやさか 純米吟醸 美山錦 生酒
• 【9号酵母】品のいい華やかな吟醸酒の定番|千峰天青(せんぽうてんせい) 生原酒
• 【1801号酵母】熟成された果実味と穏やかな味わい大吟醸酒の定番|紀土 大吟醸
• 【F7-01号酵母】甘みと酸味の絶妙なバランス|寫楽 純米酒

協会酵母(きょうかい酵母)とはなにかが少しでもおわかりいただけたでしょうか?
酵母を知ると日本酒の味わい方もまた、少し違った趣に変わる。
日本酒が美味しいと思い始めたら酵母にこだわって日本酒を選んでみるのも、また楽しいのではないでしょうか。

※ 香り、味の表現は、あくまでも個人的な感覚での表現となり全ての方がそのように感じると断定するものではありません。
※ 日本酒の在庫等の調査は記事掲載時のもので欠品、終売に関しては各店舗へのお問合せをお願い致します。
※ 写真の商品は全て720ml(新政№6シリーズは720ml)となります。

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