お店によっては升の中にグラスを入れて日本酒が提供されますよね。これを「もっきり」とも言います。
なぜこのように飲むのか知っていますか?
そして、実は飲み方にルールがあるのを知っていますか?
もちろん自由に飲んで問題ないのですが、しっかりルールをマスターすればもっと粋な飲み方ができます!
そこでこの記事ではそもそも升酒とは何か、飲み方のルールなど解説していきます。
目次
1.日本酒が升に注がれる「升酒(ますざけ)」とは?
居酒屋などで日本酒を頼むときに、グラスからわざと日本酒をあふれさせ升の中にもたっぷりと注いでくれるスタイル、升酒。これを「もっきり」とも言います。
なぜこのようなスタイルができたのか、その背景を探っていきましょう!
1-1.「もっきり」の語源は江戸時代の「盛りきり」
江戸の酒屋風景(人倫訓蒙図彙)Japanees-English Dictionary-japaneseclass.jpより引用
江戸時代、日本酒の小売店では、お客様が欲しい量を告げ酒樽から徳利に詰め替えて販売していました。明治時代になり瓶が開発されてから日本酒は、瓶詰めをして販売されるようになりました。
量り売りが中心だった江戸時代、日本酒を計って徳利に注ぐ時に使用していたのが「升」です。この升があふれるギリギリまで注いで徳利に詰める事を「盛り切り」と言われ「盛り切り」と言う言葉が由来して「もっきり」になったと言われています。
1-2.「もっきり」で注ぐのはなぜ?
日本酒を升にギリギリになるまで注ぐ「もっきり」スタイル。なぜこのように日本酒が提供されるのでしょう?
多くの場合、お店側のサービス精神によるものだと考えます。「日本酒をたっぷり、そして楽しみながら飲みたい」というお客様の気持ちに寄り添った結果なのではないでしょうか。単に徳利で提供するよりもグラスから升にこぼれていく様を楽しめる。「今日は多めに注ぎました!」というようなコミュニケーションも生まれますよね。
2. 日本酒の升酒「もっきり」の粋な飲み方
出されるとちょっとうれしいのだけれど、実際「もっきり」が出てきたらどう飲むのが正解なのでしょう?
この飲み方は間違っているといった飲み方はなく自分の好きなように飲んで構わないのです。難しく考える必要はありません。
でもこの飲み方をすると「粋」だな、日本酒の飲み方をよく知っているのだなと思われる飲み方がありますのでご紹介します。ぜひ試してみてください。
2-1. グラスの中の日本酒をそっと一口飲む
お店の方がサービスで並々注いでくれたグラスの日本酒ですから大切に飲みたいですよね!動かしてしまうとせっかくの日本酒をこぼすことになりますので注意が必要です。
無理に動かしてこぼしてしまうと見た目にも美しくないですし、こぼれた日本酒がもったいないので、最初はグラスに口を近づけてあふれているグラスの日本酒を一口飲んでしまいましょう。
2-2. グラスを持ちながら日本酒を飲む
グラスの日本酒を一口飲んだ後だとグラスの日本酒がこぼれ落ちることはありません。
ですから升の中のグラスを手でもっても大丈夫です。次はグラスの中に入っている日本酒を飲みましょう。升に入っている日本酒を飲みたいかもしれませんが、まずはグラスの中の日本酒から先に飲んでいくのがスマートな飲み方です。
また、一度升の中から上げたグラスはおしぼりなどでグラスの底を拭いて、テーブルの上に置くようにし升の中にグラスを戻さない方が衛生面・見た目から言ってもよいでしょう。
2-3. グラスの日本酒が少なくなってきたら、升の日本酒を注いでグラスで飲む
グラスの日本酒が少なくなってきたら、次は升に入っている日本酒をグラスに注ぎなおして飲みましょう。もちろん、升で直接飲みたい方は飲んでもいけないということは全くありません。升で飲みたい方は升で飲みましょう。
ただし、升に入っている日本酒をグラスに移して飲む方がスマートな飲み方だと感じる方が多そうです。私の周りにいる同僚に聞いてみても10人中7人の人がグラスに移して飲む方が良いと言っていたので、気になる方はグラスに移して飲む方が安心かもしれません。
升の中にいっぱいになるまで入れてもらったら、グラスの大きさにもよりますが、グラス2杯半から3杯弱くらいの日本酒が楽しめるでしょう。
2-4. 升のまま飲む場合の注意点!
せっかく升で出てきたのだから升のままで飲みたいという方もいらっしゃるでしょう。もちろんグラスに注がずに升のまま飲んでもOKです。木升であれば升の素材である檜や杉などの香りも共に楽しめるので升で飲んでみたい方はぜひ、香りも一緒に楽しんでみてください。
ただし、升を使って飲むときには少しマナーがあります。
まずは、「角で飲まない」ということです。升を手で持ち角ではなく、辺から飲みます。お店によっては塩を出してくれるところがあります。この場合は、升の角に塩をのせ少しずつなめながら飲むのが良いでしょう。
なぜ塩なの?と思ったかもしれません。「塩」は日本酒の味の中で唯一不足の味覚なのです。人が美味しいと感じる味の構成には「酸味」「苦味」「甘味」「辛味」そして「塩味」 の5つがあります。
日本酒には「酸味」「苦味」「甘味」「辛味」がありますが唯一足りない味覚が「塩味」 なのです。日本酒のおつまみとして、塩辛や塩を振った焼き魚などを美味しいと感じたりするのも日本酒に足りない塩分があるからなのです。
もう1つ注意点としては、升に口紅がつかないようにすることです。
木の素材の升だと口紅の色が升に移って嫌がられることがあります。口紅を軽く押さえて升に色移りしないように注意する、もしくはグラスに移し替えて飲むといった心配りも大切です。
3. 升のサイズは?何ml入るの?
升のサイズで一般的によく使われるのが一合サイズ(一合升)になります。この容量の升を標準サイズと呼び、一合升の容量は180mlで徳利一合と同じ分量です。
升の大きさと日本酒が入る容量を一覧表にまとめてみました。(下記表を参照)
升の大きさ | 外寸 縦×横×高さ(mm) | 内容量(ml) | 説明 |
三勺升 | 56×56×39 | 52 | 一番小さなサイズです。 |
五勺升 | 67×37×47 | 101 | 一合枡のほぼ半分の容量が入ります |
八勺升 | 82×82×51 | 144 | 結婚式の席札枡として人気のサイズ |
一合升 | 85×85×56 | 180 | 最も一般的なサイズです |
二合升 | 108×108×58 | 360 | 米を計るのに最適、二合の米が量れる |
二合半升 | 115×115×64 | 450 | 和婚の式でのリングピローに最適 |
五合升 | 142×142×77 | 900 | 升枡の丁度半分のサイズ |
一升升 | 172×172×93 | 1800 | 節分の時期に一番人気のサイズです |
二升升 | 204×204×122 | 3600 | イベントなどで使用 |
三升升 | 231×231×137 | 5400 | 〃 |
4. 升のお手入れ方法
おうちで升を使う方もいらっしゃるかもしれません。最近は日本酒のイベントなどでいただくことも多くなってきました。
おうちでも升を使うのなら、升のお手入れ方法を知っておきましょう。
大切なのは洗い方です。升は木の素材が多いので、その素材が持つ香りを消さないような水洗いが一番おすすめです。
お湯などの高温で洗ったり食器用洗剤を使用したりすると素材が持ついい香りが消える恐れがあるので気をつけましょう。
また、どうしても水洗いだけでは気になるという方なら、重曹や塩を使用するのが良いです。2つとも食品を扱うときに使用する物なの体内に入り込んでも気になりませんし、どちらにも殺菌作用が含まれているのでおすすめです。
重曹や塩を使用して洗うときには、升に重曹や塩を直にすり込むかんじで洗います。その後は水できれいに流しておしまいです。
升を使用する際に気をつけておきたい事は次の2点です
・長時間の浸水(長く水につけておかない)
・自然乾燥させる
天然の木でできている升には、もともと素材が持つ殺菌の力が備わっていますので実は消毒はあまり気にする必要がないというのが利点です。
まとめ
ここまで日本酒が升で出てくる「もっきり」スタイルの升酒の飲み方についてお話しして参りました。
升で出てきた日本酒は、どのようにして飲むのが良いのかよくわかっていただけたのではないでしょうか。
お店に入って、升の日本酒「もっきり」で出されても、もう迷うことなく日本酒が飲めると思います。飲み方に迷っていた方のお役に立てたのなら幸いです。
コメント