日本酒・飛露喜(ひろき)の魅力|実は十四代のおかげで廃業回避!?

ひろき

「飛露喜(ひろき)」は、福島県会津の廣木酒造(ひろきしゅぞう)が造っている銘柄。

フレッシュでフルーティーな日本酒として全国的に人気の銘柄の一つですね。人気すぎて入手困難のラベルもあるほどです。

しかし、実は廣木酒造は、一時は廃業を考えるほどの状況だったんです。

そこから、キーマンとなる酒屋さんとの出会い、あの「十四代」の高木酒造との出会いなどを経て、今の人気銘柄「飛露喜(ひろき)」が誕生しました。

この記事では、飛露喜の魅力とその誕生秘話についてお話ししたいと思います。

記事を読み終えたら飛露喜を飲みたくなるはずです!

1. 飛露喜(ひろき)の魅力とは

飛露喜は深い味わいで気品のある甘味、そしてフルーティーなお酒として人気です。

フルーティーな日本酒の中でも、飛露喜は比較的落ち着いたフルーティーさで飲み疲れしないという印象がありますね。

フルーティーといえば、フルーティーな日本酒の先駆者として、山形の「十四代」がとても有名ですね。

実は飛露喜は、十四代に影響を受けていることを知っていますでしょうか?

どうやって今の人気の飛露喜が生まれたのか、歴史をさかのぼると新しいつながりが見えて、もっと日本酒が楽しくなりますよ。

では、飛露喜の歴史を見ていきましょう!

尚、飛露喜(ひろき)誕生ストーリーは、以下の文献をもとにまとめました。

・日本酒ドラマチック(講談社)
・朝日新聞 福島版 酒よ【高く、高く】
・ニッポンドットカム|福島の風土が育む日本酒「飛露喜」
・NHK新日本探訪 「寒仕込み それぞれの冬」

2. 【誕生秘話】飛露喜は廃業寸前から起死回生!?

日本酒

2-1. 杜氏引退と父の他界で廃業寸前に

廣木酒造の創業は江戸時代後期。150年以上続く老舗です。

現在の蔵元であり杜氏でもある廣木健司氏は、9代目。青山学院大学経営学科を卒業後は、一旦キリン・シーグラム(株)(現キリンディスティラリー(株))に就職したのち、実家に戻り家業に就くことになります。

この当時の廣木酒造の酒造りは「泉川」という銘柄一本の普通酒を造っていました。

泉川

昔ながらの酒造りと時代のニーズにはずれがあり販売量も減少をたどる中、実家に戻った2年後に高齢という理由から杜氏が引退し親子二人三脚での酒造りを強いられました。

杜氏が不在のその翌年、父親が59歳の若さで他界。一人残された彼の頭の中には「廃業」の2文字が浮かんでいたといいます。 

2-2. ドキュメンタリー番組の出演が起死回生の足がかりに

番組

廃業するか迷っているちょうどその頃、ドキュメンタリー番組NHK新日本探訪 「寒仕込み それぞれの冬」の取材依頼がきました。

「記録としてとどめておける、先になって子供達に酒蔵だった証を見せてあげられるだろう」

そう考えて取材を受けました。

この番組の放送がきっかけで酒販店社長の小山喜八氏からサポートを得られるようになったのです。

小山氏は東京多摩市にある105年続く老舗の酒販店「小山商店」の経営者、彼が一言その日本酒に言葉を添えただけで瞬く間に人気商品になるというほどこの業界では知らない者はいない有名人であり、よい酒を知り尽くす眼識者でもあります。

小山商店

写真:小山商店HPより

すぐに手元にあった日本酒を送ったところ、小山氏から返ってきたのが、

「この味では固定客はつかない、市場での勝負は無理だ」
という厳しい言葉でした。「もっと自分らしい酒を追求することが大事だ」と。

これまでの日本酒といえば淡麗辛口で量産販売することが常であり、廣木酒造もまたそんな酒造りを行っていたと言います。
実はその時、自分らしい酒というよりは、売れている新潟の淡麗辛口の味わいを真似た酒を造っていたのです。淡麗辛口で一線にいる経験豊かな杜氏が醸す日本酒に、経験の浅い自分の酒は到底かなうわけがありません。

自分らしい酒とは一体どんな酒なのか・・・そこから廣木氏の模索が始まりました。

2-3. 山形の「十四代」に絶句。新しい味への挑戦

十四代

その頃、日本酒業界に新風を巻き起こしていたのが山形県の高木酒造が醸す「十四代」。

試しに飲んだところ、芳醇な旨みと切れのある飲み口、自分の知る今までの酒とは全く違う酒に絶句したのです。

この味は・・・そして自分の味とは・・・自分らしい酒造りを模索する中で「淡麗辛口ではなく洗練された濃厚な味わいがあるもの」そんな考えに至りました。

研究の日々が続くそんなある時、造った日本酒をいつもの熱処理する前の段階で試飲してみたところ、それがおいしかったのです。

廣木氏はこの「熱処理を行わない」日本酒を瓶詰めして小山氏に送ったのでした。

(通常、日本酒は製品の劣化防止などのため殺菌目的で熱処理を加えます。)

2-4. 無濾過生原酒が利き酒会で1位に!「ポスト十四代」とも呼ばれるように

送られたその酒は小山商店が主催する関係者を集めた利き酒会に出品されました。
すると見事にその酒は1位に!1999年秋のことでした。
その後、小山商店から100本、また100本というように注文が入るようになり一躍、全国区へと駆け上がっていきました。
濾過しない、火入れしないという、できたまんまのフレッシュな日本酒。
その酒こそが、今も有名な「飛露喜(ひろき) 特別純米 無濾過 生原酒」だったです。

風景

当時の日本酒業界の中では「火入れ前の酒は商品ではない」と言うのが常識でしたが、経験の浅い廣木氏は、その常識にとらわれることなく「無濾過 生原酒」を造り上げたのです。

当時32歳の若い蔵元杜氏が造った酒と言うことでも「飛露喜」は話題を呼び、「ポスト十四代」と呼ばれ業界に強いインパクトを与えました。今までにない鮮烈な味わいは飲み手の心を捉えたのでした。

2-5. 続く挑戦。長く愛される定番酒の開発 

泉屋

かぎしっぽさんブログ「泉屋」に行ってきましたより泉屋外観

「飛露喜」が誕生してから2年の時が経っていました。廣木氏には再び新たな人物との出会いが待っていました。それが郡山にある酒販店「泉屋」の佐藤広隆氏です。

この佐藤氏と言う人物は、高木酒造の「十四代」がまだ無名の時から取引を始め、高木氏と二人三脚で「十四代」を全国区に押し上げた功労者でした。

そんな佐藤氏が同業者からの「廣木氏に高木酒造との取り組みについて教えてあげてほしい」と話があったことがきっかけで、廣木氏とコンタクトを取ることになります。

そこで廣木氏に伝えたのが、十四代の成功は1年目の生酒ではなく、季節と無関係に出荷する「本丸」を2年目に造ったことにある、ということでした。

「無濾過生原酒だけではだめです。冬に出す生酒だけでなく、常時出せる定番の酒がないと客はつかない」 こうして程なく二人は山形にいる「十四代」の蔵元、高木氏の元を訪れることになるのです。

2-6. 定番酒「飛露喜 特別純米」の誕生

ひろき

実は、「定番酒」は廣木氏の課題でもありました。

生原酒の高評価は製造技術が高いからではなく、造りたての生の新鮮さが求められているだけ、冬の限定酒だけでなく通年を通して定番となる酒を造り出すことが蔵の安定と成長にもつながる、そう考えていたのです。

そして何よりも自分と境遇が近い「十四代」の高木氏がいったいどんな酒造りをしているのかを知りたい、そう思っていたのでした。

「泉屋」の佐藤氏も地元福島で全国をうならせる「十四代」のような日本酒を造る蔵元が現れて欲しいと考えていました。

2001年に廣木酒造の廣木氏、泉屋の佐藤氏、そして高木酒造の高木氏の3名は高木氏の住む山形で会うことになりました。

当時の高木氏のアドバイスを廣木氏は今も忘れません「無濾過生原酒はあくまでも変化球に過ぎない、良いストレートがあって変化球も生きるんだ、廣木君そういう酒(定番酒)を造らないと」

人との出会いでこれまでも前進してきました、そして再び新たな出会いによって日本酒「飛露喜」は大きな前進を遂げようとしていました。

その年の6月、定番酒として初出荷した「飛露喜 特別純米」しかし、高い技術が求められる酒造りに満足のいく日本酒ではなりませんでした。無濾過生原酒を造るのとは違う日本酒造りの難しさを痛感していました。

思い通りの味わいが実現できたのは2年後の2003年のことでした。「飛露喜 特別純米」の本当の意味での誕生であり、そして「飛露喜 特別純米」は廣木酒造の定番酒として不動の地位を築いていったのでした。

平成の始まりとともに新時代を切り開いた高木酒造「十四代」、そして平成中期にその影響を受けて頭角を現した廣木酒造「飛露喜」地酒の両巨頭となる2人の造り手は、こうして出会い、互いに切磋琢磨し技術を磨きあったのでした。

3. 飛露喜(ひろき)ラインナップ

ここまで飛露喜の誕生秘話についてまとめました!

では早速どんなお酒があるか見ていきましょう。

「飛露喜」は、現在市場では品薄状態となっており入手困難な日本酒の一つとなっています。ネット上ではかなり高額な値つけがされ販売されていたり、ネットオークションでも出品されていたりします。

しかし、このような高額な価格で取引されている日本酒のほとんどは正規ルートでの入手ではないものがほとんどであり、酒の保存状態に不備があり品質が劣化してしまっているものもあるようです。購入するのであればぜひ正規代理店ルートの安心できる品をおすすめします。

最後に正規代理店のホームページのご案内も載せておきます。掲載店はほんの一部で、このほかにも全国で良心的な価格で販売されている酒販店さんは多数存在しますのでぜひご自宅の近所の酒販店さんを見つけてみてください。

ここでは「飛露喜」の定番酒と限定酒のラインナップのみ参考のために定価を表示してご紹介します。

飛露喜 定番酒
ひろきひろき

飛露喜 特別純米 無ろ過生原酒

飛露喜 特別純米 生詰 

12~3月頃に販売される4月頃から販売される
定価:2.808円(税込み)定価:2.808円(税込み)

「飛露喜」を世に知らしめた一本。物語は、ここから始まった。

まろやかで旨味、甘さ、酸味のバランスが良い「飛露喜」の定番酒。

飛露喜 定番酒
ひろきひろき
飛露喜 吟醸 生詰飛露喜 純米吟醸 黒ラベル 生詰
4月頃から販売される8月頃から販売される
定価:3.240円(税込み)定価:3.564円(税込み)

吟醸ならではの華やかさがあり「飛露喜」のラインナップの中では軽やかな酒。

すっきりとした旨口、切れがよく雑味の少ないバランスのとれた味わい。

飛露喜 限定酒
ひろきひろき
飛露喜 特別純米 かすみざけ 本生飛露喜 純米吟醸 愛山 本生
12月上旬頃に販売される3月頃から販売
定価:2.808円(税込み)定価:4.860円(税込み)

新酒で醸すうすにごり。淡い白色が霞のように見え、すっきりとした後味が印象的。

甘みがありながらすっきりとした酸味も感じられる最高峰にして超限定と言われる人気商品。

飛露喜 限定酒
ひろきひろき
飛露喜 純米吟醸 雄町 生詰飛露喜 純米吟醸 山田錦
6月頃販売7月頃販売
定価:3.888円(税込み)定価:3.888円(税込み)

雄町の特徴である、ふくよかで円みのある旨みと深いコクを存分に楽しめる芳醇な一本。

華やかな香りと優しい酸味が上品な吟醸酒。甘みはほのかで後味のよい一本。

蔵元:合資会社 廣木酒造本店
福島県河沼郡会津坂下町字市中二番甲3574
※表示価格は2019年7月現在の1800ml瓶の正規販売価格となります。

【飛露喜 取り扱い正規代理店】
地酒銘酒 小山商店  webページはこちら→
地酒専門店 鈴傳(すずでん)webページはこちら→
越前酒乃店はやし本店 webページはこちら→
会津酒楽館(有)渡辺宗太商店 webページはこちら→
泉屋酒店:webページはありませんTEL024-922-8641

まとめ

ここまで福島県廣木酒造の日本酒「飛露喜」についてお話しして参りました。一本の日本酒に情熱と愛情を注ぎながら造り上げていく「飛露喜」の日本酒の魅力をおわかりいただけたでしょうか。

日本酒って知れば知るほどおもしろい、こんな素敵な日本酒に出会えて本当によかった、そして次はどんな日本酒と出会えるのかとても楽しみです。

皆様もぜひ自分のお気に入りの日本酒を見つける旅に出かけてみませんか、そこには素敵な出会いが待っているかもしれません。

【出典】
日本酒ドラマチック(講談社)
朝日新聞 福島版 酒よ【高く、高く】
ニッポンドットカム|福島の風土が育む日本酒「飛露喜」
NHK新日本探訪 「寒仕込み それぞれの冬」

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