居酒屋のメニューや日本酒のラベルで、「吟醸」や「大吟醸」を見たことがあると思います。
その違いを説明できるでしょうか?
実は、この2つには明確な違いがあります。原料となる酒米をどれだけ磨いたかの割合が違うのです。(その割合を「精米歩合」と言います。)
ちなみに、たくさん磨くと一般的に軽やかでフルーティーな味わいになります。
吟醸、大吟醸の違いをこの記事で詳しく説明していきますので、ぜひ日本酒選びの参考にしてください。
目次
1. 「吟醸」と「大吟醸」違いは精米歩合
まず、精米歩合についてです。日本酒を造る時に原料である酒米を「精米」する作業があります、この事を日本酒造りのプロたちは「磨き」と呼びます。酒米の表面には日本酒にすると雑味になる成分が含まれているためその雑味になる成分(ぬか)を取り除いて日本酒を造ります。
この「磨く(取り除く)」作業でどの程度、米を磨いたか(ぬかを取り除いたか)で「吟醸」と「大吟醸」の違いが出てきます。
玄米(精米していない状態の酒米)を100とした時に精米後の残った部分の比率をパーセンテージ(%)で表します。
「吟醸」は、精米歩合60%以下の日本酒を指し、「大吟醸」は精米歩合50%以下のものをいいます。
2. 味やその他の違いは?
日本酒の世界では米は磨けば磨くほど口当たりが軽やかになり、この事を「きれいな酒」に仕上がったというように表現したりします。
しかしただ磨けばいいのかというとそうでもなく米は、磨けば磨くほどもろく、割れやすくなります。そのため精米歩合を高めるために時間をかけ注意深く丹念に作業することが求められとても手間と時間がかかる作業となります。また、手間がかかる分、他の日本酒と比べると価格も高くなります。
上の図で説明すると精米歩合60%とは、玄米を磨いて酒米をもとの60%にした状態をいいます。削り取った雑味部分のぬかは40%となります。このラインの精米歩合の日本酒は「吟醸」もしくは「純米吟醸」と呼ばれます。米本体を60%と少し多めに残していることで雑味は取り除かれているが米の旨味、甘味、風合いはしっかりと残っており口当たりの程良い飲みやすい日本酒に仕上がります。
精米歩合50%とは、玄米を半分磨いた状態をいいます、取り除いた雑味部分のぬかは50%、もとの玄米を半分削り取った形になり酒米自体とても小さくなります。本来の米の半分又はそれ以上を削って造るお酒もあり、日本酒が苦手という人がイメージする様な独特の米の味の粗っぽさなどは全く感じられない日本酒です。味わいはとても軽やかで口の中にスーッと入ってくる感じが他の日本酒と大きく違うところでもあります。このラインの精米歩合の日本酒を「大吟醸」もしくは「純米大吟醸」と呼びます。
そしてこのように精米歩合50%や60%と削り取る部分が多い精米のことを高精白と呼びます。
一方、精米歩合80%は、玄米を磨いて80%にした状態のことを言います。この時削り取ったぬかは20%。そして削る部分が少ないこのような精米のことを低精白と呼びます。
では、低精白で磨きが少ない日本酒は味気ないお酒になるのかというとそうでもなく、磨きが少ない日本酒は素朴な味わいで米本来の旨味に奥深さがあり「吟醸」や「大吟醸」とは違う魅力があり捨てがたいものが多いのも事実、最近ではあえて「磨きすぎない」低精白の日本酒を造り販売している蔵元もある程です。
3. 味わいは本当に変わるのか飲み比べてみよう
同じ銘柄の日本酒でも吟醸と大吟醸とでは味わいが変わってきます。蔵によっては同じ銘柄でも酒米や酵母を変えて造っている日本酒もあり飲み比べてみると味わいの違いが分かりとても楽しいものです。
今回は純米タイプとアル添タイプの飲み比べを例にとってご紹介してみます。皆様もぜひ機会があれば飲み比べてみていただくと、より日本酒の味わいを深く知ることが出来ると思います。
3-1. 八海山 吟醸VS八海山 大吟醸
八海山は新潟県の有名銘柄の一つで知っている方も多くいる日本酒だと思います。一口に八海山と言ってもそのラインナップは結構広く普通酒~大吟醸酒までいろいろあります。
もちろん純米タイプの八海山もあるのですが、ここではアル添タイプの吟醸酒と大吟醸酒の味の違いを見ていきます。
酒米、アルコール度数、日本酒度、酸度、アミノ酸度等は全く同じなのですが、使われている酵母や酒米を変えることでそれぞれ趣が違う日本酒に仕上がっています。
「八海山 吟醸」 ・八海山は、どのラインナップを飲んでも角のない丸みのある甘みが特徴ですが、こちらの吟醸は口の中に入れた瞬間にふっくらとかるく、優しいとろみがわかります。 | 「八海山 大吟醸」 ・大吟醸の香りはとても華やかな印象を受けました。リンゴの様な果実系の香りと花にも似た甘い香りが相まって「吟醸」より華やかかつ清々しい印象を受けました。 |
吟醸と大吟醸で飲み比べてみると口の中に含んだ時の感触、味わい、香りなどの違いがはっきりと分かる日本酒だと感じます。特に吟醸酒は、夏には冷やして冷酒で冬は常温でそのまま飲んでも味わいが変わらず価格的に手を出しやすいラインということでは日本酒初心者にもおすすめできる一本、また飲みやすい吟醸・大吟醸ということでチョイスする際にもアル添タイプの吟醸や大吟醸はおすすめできるのではないでしょうか。 | |
・蔵元:八海醸造(株)(新潟県) |
3-2. 天青 純米吟醸VS天青 純米大吟醸
酒処といえばやはりすぐに頭に浮かぶのが兵庫、京都、新潟、秋田あたりかと思います。天青を醸し出している熊澤酒造は神奈川県の湘南にあり、湘南で唯一残る酒蔵であります。
そしてこの天青の純米系のラインナップは、どのタイプも純米酒にありがちな口の中でまとわりつくような重たい味わいではなくスッキリとクリアな味わいでバランスの取れた日本酒となっています。
吟醸香も品のある柔らかい香りで主張しすぎない所はどんな料理と合わせても邪魔しない日本酒として人気がある理由だと感じます。
純米吟醸、純米大吟醸ともに同じ酒米、同じ協会酵母を使用しており違うのは、精米歩合だけなのですが天青の純米吟醸 は日本酒初心者にもおすすめできる軽やかな日本酒となり日本食だけでなく洋食と合わせてもおしゃれにいただける軽い香りと程よい甘みが特徴です。
一方の大吟醸では、さらに口当たりがまろやかになるのがわかるのと、より優しく香る吟醸香とで「磨き」だけでここまで味わいや香りに違いが出るのかと感動した日本酒です。
「天青 純米吟醸 千峰天青」 ・天青の特徴は純米酒であっても特有の貫禄のある味わいで勝負するのではなく「スッキリと食事と共に楽しめる」をコンセプトとして、どのラインナップも洗練された品のある優しい味わいが特徴、スタイリッシュでおしゃれな味わいが楽しめます。 | 「天青 純米大吟醸 雨過天青」 ・天青の純米大吟醸は、純米吟醸よりもさらにスッキリと透明感のあるサラッとした甘味と若干の酸味が程よく調和されています。大吟醸酒はお酒だけで楽しむ方が良いものが多い中、食事と合わせても嫌味にならない。130年の歴史を持つ神奈川県湘南に唯一残る酒蔵が醸し出す大吟醸の香りは9号酵母ならではの白桃に似た果実香とライラックの花のような上品な香りが特徴的。高価ながら常備酒としておきたいくらい好印象を与える日本酒。 |
純米吟醸と純米大吟醸は飲み比べると口に含んだ時のより細やかな口当たり、ソフトな香りやコク、甘味を追求してしまうとやはり大吟醸に軍配が上がるかもしれません。米本来の味わい、香り、風味を味わいたいと考えている初心者であれば純米吟醸から始めてみるのが価格的にもおすすめです。 | |
・蔵元:熊澤酒造(株)(神奈川県) |
4. 「純米吟醸」と「吟醸」、「純米大吟醸」と「大吟醸」の違いは原材料
次は、「吟醸」「大吟醸」の種類についてです。吟醸とつく日本酒には「純米吟醸」と「吟醸」があり大吟醸とつく日本酒にも「純米大吟醸」と「大吟醸」の2種類があります。
吟醸も大吟醸も前に「純米」がつくか、つかないかの違いです。この違いは何かというと原材料の違いです。
純米とつく「純米吟醸」や「純米大吟醸」の原材料は、「米・麹・水」のみで造られており米自体の旨味、甘味、口当たり等を大切にした日本酒となっており香りも自然な米の香りが特徴です。
日本酒を購入するときには酒瓶の裏ラベルの原材料という所を確認すれば記入されているのでわかりやすいと思います。
一方、純米の文字がつかない「吟醸」や「大吟醸」は原材料が「米・麹・水・醸造アルコール」が含まれたものになっています。醸造アルコールの原料はサトウキビや穀類を発酵させて造られたアルコールが使用されており味や香りを整えるために加えられています。
すっきりとしたシャープな口当たりで飲みやすく、また熱燗などでいただいても味が崩れにくいという特徴があり日本酒を毎日飲みたい愛酒家の多くは自分好みの「アル添タイプ」を探し出し楽しんでいる方が多いのです。
まとめ
ここまで吟醸と大吟醸では何が違うのかというお話をしてまいりました。
「吟醸」と「大吟醸」の違いは、酒米を磨く時の磨き具合である精米歩合が違うという事、そして吟醸と大吟醸の種類には「純米吟醸」と「純米大吟醸」という純米系のものと純米とつかないアル添タイプと呼ばれる「吟醸」と「大吟醸」とがあるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
純米タイプの吟醸や大吟醸は、米本来の旨味、甘味、香りを存分に味わいたい方におすすめできますし、アル添タイプの吟醸や大吟醸は、華やかな香りでスッキリと飲みやすい日本酒がお好みの方にピッタリ、そんな風にも言い換えられるかもしれません。
また、酒米にかなり磨きをかけて醸し出す「純米大吟醸酒」や「大吟醸酒」より米の個性を生かした造りが求められる「純米吟醸酒」や「吟醸酒」を選んでみるといのも一つの選択方法かもしれません。
自分好みの日本酒探しのお手伝いが出来たのなら嬉しい限りです。
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